息子が二週間の海外研修へ出かけていった。
彼にとってはこれが初めての海外で、出かける前に風邪をひいてはいけない、何か忘れ物があってはいけないと気を張り詰めていたけれど、出発する前の日はなかなか眠れず、当日の朝はマンションの下まで一緒に階段を降りながら、長く離れる不安と寂しさで涙が出てきてしまった。そんな私を「えっ、泣いてる!?」と笑いながらハグしてくれた息子は優しい。本人は大学生か社会人になったら一人暮らしをしたいと言っているけれど、息子が家を出る日のことを考えると、今から寂しくなってしまう(しつこく、何度も会いに行って嫌がられる親になるのではないか……)。
息子が旅立った後は恋人の家に泊まり込むことにしていたが、あいにくあちらが校了直前で残業続きの毎日。しかも彼自身が週末にカレーを作り置きしていたので、最初の方は夕食をつくる必要もなかった。夜は自分の家に戻って宅配便を受け取ったり、掃除をしたり、本を読んだり、溜めてしまっていたブログを書くなどしていた。
誰とも、誰のためにも過ごさない一人きりの夜はなんだか新鮮で、よく考えてみればこれほど長く自分のためだけに時間を使える夜は14年ぶりのことだった。
この間に読んだ本:「八本足の蝶」二階堂奥歯 「兎と呼ばれた女」矢川澄子 「花腐し」松浦寿輝 「40歳がくる!」雨宮まみ