笹塚diary

渋谷区笹塚を愛し、この場所で生活するシングルマザーの日記

2024.2.22:スマホを落とした

この日の朝のカモは、満開の河津桜を見上げているように見えた。

駅まで恋人を見送り、家に戻ってきて早速、お花見カモの写真を送ろう!と上着のポケットを探ると、あれ、ない。バッグの中にも部屋の中にもない。

駅からの道を戻ってみたが見つからなかった。歩道を掃除しているパチンコ店の店員さんに「この辺りにスマホ落ちてませんでしたか?」と尋ねると、「え!スマホですか!」とすぐに拾得物確認をし、「早く見つかるといいですね」と心配してくれた。

もうやれることはなさそうなので、笹塚交番に遺失届を出しに行くことに。交番のドアを開けようとすると、中に私のスマホを手に取っているお巡りさんの姿が見えた。

「あ、それ!」
「あ、これ、ちょうど今届いたんですよ」
「私のですー!」

どこで落としたか、どんな壁紙にしているか(2歳当時の息子)を尋ねられ、身分証明書の確認も。ちょうどスマホカバーのポケットに航空チケットの半券が挟まっていたこともあり、すぐに渡してもらえた。お巡りさんも「親切な方が届けてくださったんですよ。見つかってよかったですね」と喜んでくれた。

すぐに恋人に桜を見上げるカモの写真を送る。無事、送れて良かった。

仕事がひと段落したところで自分の家に帰ると、ちょうど学校から息子が帰ってきたところだった。「今朝、スマホ落としちゃったんだけど、親切な人に拾ってもらえたんだよ」と話しながら、上着のポケットからスマホを取り出そうとすると「あれ?ない」。

息子は「さすがに嘘でしょ?」と大笑いしている。

バッグをひっくり返しても、ない。息子から私に電話をかけてもらっても呼び出し音がしない。もしかしたら帰り道で落としたのかも、と再び恋人の家まで戻ったが、見当たらなかった。マンションの下の店舗の店員さんにも、この辺りでスマホを見かけなかったかを聞いてみると「それは大変ですね!」とわざわざお店から出てきて一緒にマンションの周りを捜索してくれた。見つからなかったけれど、ありがたかった。

仕方がないので、再び交番へ行くことに。よりによって朝と同じお巡りさんが座っている。気まずい。

「すみません、信じられないと思うんですけれど。またスマホを落としてしまって」「ええ!?」

先ほど喜んでくれたこのお巡りさんにも、わざわざ交番までスマホを届けてくださった方にも、なんだか申し訳なかった。

遺失届と引き換えに問い合わせ番号が書かれた紙をもらい、思わずポケットに入れようとしたところ「ほら!ポケットに入れるとまた落としちゃいますよ!ちゃんとバッグに入れてください!今、僕が見ている目の前で入れてください」とあきれ顔。すみません……。

家に帰ってから「iPhoneを探す」の機能を思い出し、Macbookから場所を確認してみると、どうやら恋人の家のゴミ集積場にあるようだった。家に帰る前にごみをまとめて捨てた時、上着のポケットから滑り落ちてしまったらしい。

実は先日の旅行先の大久野島でも、ウサギを抱きながら腰かけた場所にスマホを忘れてきていた。どうして私はこんなに、スマホをなくすんだろう。

もしかしたら、スマホなんて世の中からなくなってしまえばいい、と思っているから、ぞんざいに扱ってしまうのかもしれない。普段からスマホの置き忘れや充電切れが多いため、恋人には「スマホに興味なさすぎ」と呆れられている。いまだに文字入力はガラケー打ちだ。

数年前にスマホを落としたまま仕事をしていた時には、取材相手の大学生に「なんでそんな冷静にしていられるんですか?僕だったら仕事どころじゃないです」と驚かれたことがある。今回もスマホを失くした話をした全ての人がとても心配してくれた。

でも、実際に私が困ったのは、すぐにカモの写真が送れないことと、電話に出られないことで仕事に支障が出ることぐらいだった。でも、それならガラケーでもいい。

自分にとって、スマホがなければできないことは少ない。このブログもPCから書いているし、写真を撮りたいならデジカメもある。自転車移動が主なので音楽は家で聴くし、電車の中では本を読んでいる。スマホにあって便利だと思うのは、すぐに物事を検索できるSafariと道案内をしてもらえるグーグルマップの機能ぐらい。

一方で、スマホがあるせいでできない、と思うことはよくある。人からの連絡を気にせずにいることとか、スマホなしで仕事をすることとか。映画「PERFECT DAYS」を観た時、小銭と車のキーとガラケーだけ持って外出する主人公を心底羨ましいと思った。いつの間にか世の中ではスマホがインフラの一つになっていて、何につけても当然のように使用を求められることに憤りを感じている自分がいる。

こんな風に「本当は要らないのに」と思い続ける限り、きっと私はまたスマホを落としてしまうだろう。だからスマホケースにペンギンのプラ板キーホルダーを付けることにした。小学生時代の息子が学童でつくってくれた、かわいくて大事なキーホルダー。これでスマホをなくさないようにしようと思える。

何だかスマホへの恨み辛みになってしまったけど、要するに1日に2度もスマホを落としてしまったという、ただのうっかり話である。