笹塚diary

渋谷区笹塚を愛し、この場所で生活するシングルマザーの日記

2024.3.3夜-3.6:元ガモの記録

3月3日
夜は栄湯へ。帰りに川沿いを歩いてみたが、カモたちの姿は見当たらなかった。つがいはいつものように夜は違うところで過ごしているのかもしれない。元ガモはどこかへ出かけているのだろうか。

“湯上り飯”は旧水路近くの「井口」で。銭湯帰りのビールと焼き鳥は最高! 揚げ茄子もおいしい。普段は家の近くのフジタカ食堂へ行くことが多いけれど「笹塚にカモが来ている間は、井口でごはんもいいね」「何といってもカモの近くのお店だし」と言い合う。

 

3月4日
憂鬱な月曜の朝も、カモを見てから出勤するというモチベーションによって支えられている。水辺でうずくまってひなたぼっこしている元ガモがかわいらしかった。

夜は「対岸にいて首をフリフリしていたよ」と恋人から写真付きのLINEで報告あり。その後、息子が父親の家に泊まりに行くと言うので、私は笹塚へ。川辺で寝ている元ガモを見て南口商店街の「さささのさ」で夕食。ここも「カモの近くのお店」だ。

 

3月5日
朝はつがいは川の中、元ガモは陸地で熟睡。3匹の上に咲く河津桜が美しい。雨が降ってきた。

ここ数日の元ガモは寝てばかりで、土手をよちよちと歩いているのを見たのは先週が最後だったか。

夜は「橋の下で雨宿りしていたよ」と恋人から写真付きのLINEで報告あり。いつもスマホのライトをつけてまで元ガモを探しているらしく「玉川上水に落とし物した人だと思われるかな」と笑っていた。

 

3月6日
昨夜に引き続き朝から大雨。今年はなんだか雨が多い気がする。

「お天気悪いから、今朝は見に行くの、やめておく?」と聞いてみたけれど「見に行きたい」と言い張る恋人。「家で待ってる?俺だけで行ってくるよ」と逆に聞かれたので「いやいや、私も行く!」と慌てて上着をつかんで外に出た。雨の中を歩きながら「ねえ、カモいなかったらどうするの?」と冗談めかして言うと、彼は黙って笑っている。

本当に驚いてしまう。彼は昔から「正直、犬や猫のかわいらしさがわからないし、本当に関心がない」と言っており、ペットも一度も飼ったことがないという人だったのだ。

「こんな雨の中でも見に行きたいって言いだすなんて、あきれてる?」と言うので、そんなことないよ、もし、いなくてもいいよ、いない日があるというのも観察の成果だよ、と言いながら、ズボンのすそを雨で濡らしつつ川沿いへ向かった。

「うわ、びっくりした」

恋人の指さす方を見ると、つがいのカモが距離をとって土手の上に佇んでいた。

普段なら川の中か水辺にいる二匹がこんな場所にいるなんて。いつも仲睦まじく寄り添っているので、このように距離をとってじっとしている姿を見たことはなかった。また、こんなに朝早くから見かけるのも初めてだった。「カモってやっぱりおもしろいね、何を考えてるんだろう」と言いながらすぐ傍の橋の下を見ると、首を前に出して横たわる元ガモがいた。

瞬時に、あ、死んでいる、と思った。でも、信じられなかった。信じたくなかった。

カモはくちばしを背中の羽毛にうずめて眠る。「あんな姿勢で寝てるだけだよね?」信じられないのに涙は出てくる。

とりあえず、一度家に戻ることにした。

「後で保健所に連絡してみよう」と言いながら横を歩く彼の表情はよくわからなかった。