笹塚から乗った京王線の中で、前の席の人も隣の席の人も「オパン」の紙袋を持って座っていたことがあった。パン好きの中では、笹塚といえばオパン、と言われているらしい。店の前にはいつも行列ができている。
恋人が笹塚で最初に連れていってくれたお店が、オパンだった。この一年で一番通ったお店かもしれない。オパンがある限り、笹塚住民は幸せだし、オパンがある限り、笹塚に住み続けたいとさえ思う。
今日の朝食もオパン。いつもは週末限定のキャラメルナッツを必ず買うけれど、今日は友達とランチの予定があったので、ほうれん草のキッシュと生ハムのキッシュといちごサンドを半分こすることに。彼はそれに加えてチャバタのBLTサンドも。
パイ生地嫌いだった私も、オパンでキッシュの美味しさに目覚めた。オパンのキッシュは丸くてずっしりとしていて、パイ生地はクッキーのようにコクがあっておいしい。
その後、四谷三丁目の「CLISP」へ。結婚前に勤めていた出版社の友達と久しぶりの再会。
結婚前から夫婦ともに仲良くしてもらっていた二人に、面と向かってようやく離婚の報告ができた(結婚と違い、離婚の報告というのはタイミングが難しい)。
二人とも私たちの関係性をすぐに理解し、認めてくれた。しっかりと伝わっている実感も得られて安心する。
逆に、いくら仲良しでも、どれほど言葉を尽くしても分かり合えた気がしない人もいる。
「この世界は、ほんとはたくさんの世界がある。つながっているようにみえても、つながっていない世界がある」
映画『PERFECT DAYS』
二人と別れて帰宅したところに、ちょうど息子も学校から帰ってきた。オパンのキッシュをおやつに出したところ、ほぼ一口で食べてしまう息子。おいしい?と聞くと、うん、とただ一言だけ。食べさせ甲斐のないヤツめ。
彼はおいしいパン屋さんの手のひらサイズのキッシュを食べるよりも、コンビニで売っているまるごとソーセージを3つも4つも食べたい、というようなお年頃なのだ。わかっているけれどやっぱり、私が美味しいと思ったものは、息子にも一度は食べさせたいと思ってしまう。
中学生男子は、私と違う世界を生きている。だけどその世界はきっと、つながっているようにみえなくても、つながっている。