前日から宿泊していたのは「SIMA inn」という古民家を改装したゲストハウス。
スナックやバーなどが立ち並ぶ歓楽街の路地にあったので、部屋には『周辺の飲食店の音が賑やかなのはご理解ください』というような張り紙があったけれど、この日は静かで落ち着いていて、過ごしやすい宿だった。
幸い雨があがっていたので、朝から尾道の街歩きに出発。以前、尾道のガイド記事を執筆したことがあるという彼がガイドしてくれた。
市街地から踏切を渡り、線路を超えて千光寺山の方へ。目の前にはこれぞ尾道という階段続きの道が続き、後ろには古い街並みを見下ろす絶景が広がる。
狭い路地には地域ネコがいた。
路地をすり抜けていく二匹の猫を見送った後、「ネコノテパン工場」へ。
お客さんが一人しか入れないぐらいの小さなお店である上に、女性の職人さんたちが小さな手でつくっているので『ネコノテ』パン工場という名前らしい。
小さなお店なので、すぐに行列ができてしまう。開店と同時に地元のおじさんたちが息を切らして坂道を走ってきて、お店の前でお互い順番を譲り合っていたのがほほえましかった。
広島に来てから、お店の人や街の人から「どこから来たんですか?」と聞いてもらうことが何度もあって、その度に自分が旅に出ていることを実感した。この何年もそんなことを感じられるような余裕のある旅行はできていなかった気がする。
パンを食べに一度宿に戻った。小さくても食べ応えのあるクイニーアマン、メロンパン、そして初めて食べた「トライアングル」のおいしかったこと! さくさくのクッキー生地の三角形のパンの中に、とろりとしたチーズが入っていて、食べている間から「もう食べたい」。
再び千光寺山へ。ロープウェイに乗る前に「ガレットゥーリ・コモン」で、山頂で食べるワッフルを買った。手のひらサイズのかわいらしいワッフルサンド。
ワッフルを食べながらしばらく絶景を眺め、今度は歩いて山を降りてゆく。古民家が立ち並ぶ小道を何度も振り返って惜しんだ。
下山してからは「おやつとやまねこ」の尾道プリンを買いに。本店には行列ができていたけれど、昨日夕食を食べた「こめどこ食堂」でも買えるということで、再びこめどこ食堂へ。裏口が「おやつとやまねこ海辺店」となっていて、尾道プリンやケーキがお店の中でゆっくり食べられる。
かわいらしい猫印の牛乳瓶に入った尾道プリンのほかに、尾道水道を渡った向島にあるという「USHIO CHOCOLATOL」のチョコレートもおみやげに。今度は向島にも行ってみたい。
お昼は「尾道WHARF」で大好きな牡蠣ざんまい。
カキフライ定食に焼き牡蠣、そして生牡蠣。旬の新鮮な牡蠣に舌鼓を打つ。特産の瀬戸内レモンもきいている。
その後、県営倉庫をリノベーションしてつくられた「ONOMICHI U2」を見たり、しばらく海辺を散策したりした。
今回訪れた尾道は、将来の移住を夢見るぐらい大好きな街になった。
海と山が一緒にあるのは生まれ育った街に似ているし、こじんまりして落ち着いた雰囲気は今住んでいる笹塚にも似ている。空き家や古い建物を積極的に若い人たちが活用して、お店やアートスペースにして楽しもうという町全体の勢いも好ましい。古民家が残る町並みを眺めながら、ああ、映画に出てくる町だ、とノスタルジックな気持ちになる。短い滞在でも愛着がわく、懐かしさとときめきが同居する町だった。
次に来る時にはみはらし亭に泊まってみたいね、とか、今度はこういう行程にしようなどと未練がましく尾道について語りながら、在来線と新幹線を乗り継いで京都へ向かった。