笹塚diary

渋谷区笹塚と秋が好きすぎるシングルマザーの日記

2025.1.11:ZINEフェスの日の日記

前日はほぼ徹夜で準備。2時間眠って、ふらふらしながら起床。息子にお弁当を持たせて送り出すと、荷物がぎゅうぎゅうに入った重いスーツケースをひいて自宅を出発。浅草へ向かう。寝不足と不安と緊張でちょっと気持ち悪い。高校時代のマラソン大会の日の朝を思い出す。

会場に到着して、椅子・テーブルなどの設置準備を行い(ZINEフェスは30分の「お手伝いタイム」に参加することが必須)、自分のブースの両隣の方にごあいさつ。「今回、出展が初めてで、わからないことばかりで」「あ、私も初めてなんです」などと言葉を交わす。左隣はかわいらしいイラストの本を作っているデザイナーさんで、右隣は浅草という街と人をテーマにしたガイドブックをつくる学生さんの団体だった。わいわいしていると、あっという間に開場時間。

日記本の手売りをしてみたい、5月の文フリまで待てないという気持ちで二週間前に申し込んだZINEフェス東京。500組が出展する中では、日記本や白黒コピーのお手製のコピー本など埋もれてしまうに違いなく、誰もブースに立ち寄ってくれない悪夢を何度か見た。でもこの時点で楽しく、もう誰も立ち寄ってくれなくてもいいと思えていた。むしろ、いろいろなブースを寄って回ることができて楽しいかも、と。

最初のお客さんの入りはぽつぽつ、13時前になると急に人が増え始め「今のうち」と会場を回ってきた右隣さんが「(会場に上がる)エレベーターが大行列でしたよ」と教えてくれた。

初めて売れたのはカルガモのステッカー。笹塚に関係する本を売ってます、と大々的に銘打っているので、買ってくださった方に「笹塚って、ご存知ですか?」と聞いてみると、「いえ、実は愛知からきたんです」とのこと。遠路はるばるいらしている方もいるのか!すぐにカルガモのイラストを描いてくれたパートナーにLINEで「売れたよ!」と連絡。

そこから17時までは、うれしいことに一度もブースから人が途切れることなく、ずっと立って話し続けていた。開場してから折ろうと思っていたフリーペーパーは話しながら折り続けることになり、食べようと持ってきていたパンやおにぎりには口をつけることができず、合間に読もうと思った本は一度も開けなかった(坂口恭平さんの『絶望ハンドブック』)。

本を買ってくれたお客さんの層は、さまざまだった。日記を本にして売っているというだけで驚かれたりもした。

『笹塚』に目をとめてくれた京王線ユーザー。これから笹塚に飲みに行くからこれも縁だわ、と言って本を買ってくれた人も。私の17歳当時(99年)の日記に食いついてくれた同世代、若い世代、年配の方、同じように本屋開業をめざしている方、アニオタの友達がつくった同人誌を買いに来たという男性、出版関係の方、建築士の方、外国の方々、図書館の館長さん……。 そしてずっとお会いしたかったSNSつながりの方たち。どなたも自分のスマホカルガモBOOKSのアカウントをそっと見せてくれるのがおもしろかった。

日記祭で日記本を買ってくれた方から直接感想を聞くこともできた。あの日、たまたまボーナストラックに立ち寄って私の日記を読み、日記の面白さに目覚め、自分も日記を書き始めて、いつか本にしたいと思っているという。「あの日買った本があまりに良かったものだから、今、友達に貸しているんです」と言われ、感激のあまり泣きそうになってしまった。この方の何かのきっかけをつくれたということがなんだかすごくうれしい。

4時間ほぼ立ちっぱなし、話しっぱなしだったけれど、全く疲れを感じなかった。

終了時間の17時近くなってやっと、お近くの知り合いのブースに本を献本するために顔を出すことができた。ほかにもお目当てのブースや出展のきっかけになった憧れの人のブース、気になったブースがあったのに、回れず残念。自分がいた六階はまだしも、五階はどんなムードだったのかさえわからない。

撤収しながら両隣のブースの本をお互い買い求め合う。右隣の方はにっこり笑って「ブース、大盛況でしたね」と言って、私の似顔絵を描いた名刺をくれた。皆とさよならするのが寂しくてたまらなかった。

ブースにはたくさんの方がいらしてくださって、いろいろなお話ができて、会いたかった方にも会えて素敵な出会いもあって。なんだかご褒美みたいな時間だった。日記本をつくって、出展して本当によかった。

お客さん一人ひとりにドラマがあって、普通なら絶対知り合えない人と話ができて、その人の人生に少しでも触れられて、私はずっとこういうことがしたかったんだと改めてわかった気がした。